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提訴で「竹島恒久化」に待ったを

2012年9月 5日 


   竹島、尖閣諸島などの領土問題について、昨今、いろいろな機会に意見を述べてきたので、ここで考えをまとめてみたい。

お断りするが、外務省とは何の連絡も取っていない。関係部局があまりに忙しそうなので、近づくのを遠慮している。


≪実効支配覆す武力行使不可能≫


 結論からいえば、竹島問題をめぐる国際司法裁判所(ICJ)への提訴に大賛成である。韓国は同盟国米国の同盟国、日本の最大の友好国の一つであり、竹島で戦争はあり得ない。とすれば韓国の実効支配を妨げる方法はない。

 日本にとってできることは、既成事実が確立しないように、いわば時効を中断し続けることである。過去にも韓国が新たな建造物を建てたときなど、日本は抗議していると記憶する。島根県議会の決議も時効中断の一つである。問題は、それが単なる時効中断でしかないのに、そのたびに韓国の世論が激昂(げきこう)して、日韓関係が無用に悪化したことであった。

 今後は、何年かに一度(何年おきと決めておいた方がよい。そうしないとその度に反発の理由となる)、必ずICJに提訴し、韓国がそれを拒否するということを繰り返していればよい。それ以上に効果的な時効中断の措置はないと思う。韓国も裁判所に提訴ということならば、反日運動を起こしにくいのではないかと思う。

 それをするならば、尖閣でも中国側が提起すれば、応訴する姿勢を示した方がよい。中国が自分の領土だと言って、不法上陸しようと漁船を送ろうと、どんどん逮捕処罰してよい。日本側の実効支配の措置についても、施設を建てようと自衛隊が駐屯しようと一向に構わない。中国に対しては、領有権主張ならば領海侵犯など姑息なことはせず、出るところに出ろ、と開き直ればよいわけである。

 実効支配については、「もともと日本の領土なのだから、実効支配など不必要なことをすると、かえって立場が弱くなる」というどこか倒錯した議論があったが、日本の領土ということを中国が認めないのがそもそもの問題だという点を無視した不思議な論である。


≪中国は尖閣で「サラミ戦術」≫


 北方領土は、政治的解決しかない。法的根拠としては、安政条約と千島樺太交換条約という立派な条約があるが、その後、戦争があった。ソ連は中立条約の期限中にもかかわらず、一方的に戦争をしかけて、どさくさに紛れて占領したままである。その決着は日露平和条約で付けるべきであり、そのためには政治的折衝が必要である。だから、日露間で未解決の問題となっているのである。

 ところで、過ぎたことを言っても仕方がないとはいえ、領土問題では菅直人内閣の時に2つの大きな失策を犯している。

 尖閣沖の中国漁船衝突事件で、クリントン米国務長官は直ちに、尖閣は日米安保条約の適用範囲だと発言した。南シナ海での中国のやりくちを見ていると、まず漁船が侵犯し、やがてその既成事実を固め、しまいには領有宣言をするという「サラミ戦術」である。

 だが、米国が安保条約の適用範囲と言ってしまっては、この戦術を続けても、先行きは日米同盟との軍事対決しかなく、「サラミ戦術」の意味が無くなる。だから、中国はその後、1年間、尖閣に出てこなかったのだろうと思う。ところが、日本がその機会を利用する気のないことを見極めて、またぞろ出てきたのだと思う。


≪領土で好機逸し続けた菅政権≫


 折から防衛白書は南西諸島防衛の決意を示していた。もし、あの時に、機を逸せず、自衛隊を派遣するなど実効支配を示し、できれば集団的自衛権の行使を認めて日米同盟強化の方策を遂行していれば、あるいは尖閣問題は今頃、過去の問題となっていたかもしれない。

 もう一つは、ロシアのメドベージェフ大統領(現首相)がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席の途次、国後島に立ち寄ることを明らかにしたときである。私の意見など通らない時期ではあったが、私は各所で個人的な意見は述べた。ここで菅首相は面会を延期すべきであると。

 菅首相としては初めての日露首脳会談ではあるが、多数国会議に出席のついでのことであるので、必ずしも会わなくてもよい。「世論が許さないから、また次の機会に」と言えばそれですんだ。私の判断では、ロシアも今や開放社会であるから、メドベージェフ氏が余計なことをして日露関係を損なったという批判が、どこからか出てきていたかもしれない。

 さらに、当時は後継大統領がプーチン氏とは決まっていなかった。メドベージェフ氏が外交で失敗したということはプーチンにとり悪い話ではないはずと思った。

 そうしておけば、その後、ロシア首脳の日本訪問に際して、北方領土立ち寄りだけはなくなっていたはずである。

 いずれも惜しい機会を逸したと思う。

 以上、思いつくまま私見を述べさせていただいた。(おかざき ひさひこ)

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