by on 2005年8月 7日
郵政改革法案の成立を支持する 解散に追い込めば国益損うだけ
(2005年8月7日付産経新聞日刊【正論】掲載)
<<もっと重要な問題がある>>
真っ先にお断りしなければならないのは、私は郵政問題のことは何にも分からない。色々な人に説明をしてもらったが、賛成反対にそれぞれ言い分があるということしか分からなかった。
一番分かりやすかったのは、これだけ莫大(ばくだい)な時間と労力を費やして、実際はほとんど同じことだという反対論であった。
それなら私は同じ理由の上に立って賛成論である。
あえて理屈をつければ、新しいことなどは、そうしばしばできるわけではないのだから、せっかくここまで時間と労力を費やしてしまった以上、改革によって良い点は伸ばし、悪い点は抑える良いチャンスだというくらいであろう。
ただし、本当は、私はそんな理由で成立を支持しているわけではない。
私としては、早くこの問題に決着をつけて、もっと重要な問題に取り組んでほしいのである。
日本の政治にとって、今から来年の九月までの一年間ほど大事な時期はない。
参院選も衆院選も予定されていないし、来年九月の自民党総裁選でも小泉総理の再再選は予定されていないのだから、思い切った政策を断行できる時期である。
こんなチャンスは、あと何年後に来るかわからない。
<<向こう一年の好機逃すな>>
もう一つ重要なことがある。それは、日本にとって近来まれな親日政権であるブッシュ政権が、まだ健在であることである。しかも、小泉総理との間には固い信頼関係がある。
近年の国際情勢の大きな地殻的変動によって、日本という国家にとって極めて重大なこと、たとえば、憲法の改正、集団的自衛権行使の容認、米軍再編成による日米同盟強化について、日本と中国の長期的な国益が必ずしも一致しない状況も生じている。
その場合、現在のブッシュ政権と小泉・ブッシュ関係ならば、米国の支持を完全にあてにできる状態にある。
こんなチャンスもまた、何時訪れるか分からない。私はこのチャンスを逸してほしくないのである。
もし法案が通過しないで総選挙にでもなれば、自民党が勝っても、また数カ月は郵政に費やさねばならない。
負ければ、小泉・ブッシュ関係はおしまいになってしまう。
そうなれば日本は千載一遇のチャンスを逃してしまうことになる。
私の議論の弱いところは、もし郵政が片付いても、小泉総理がこういう大きな問題に取り組むかどうか分からないではないか、ということである。
しかし、それは自民党全部の問題でもある。自民党が、その総意として、集団的自衛権の解釈の変更、憲法の改正、消費税の値上げなどを実施する気持ちになるとすれば、小泉総理がそれに反対することはあり得ない。
実は、あまり気が付かれていないことであるが、小泉総理は、昨年九月の新内閣発足以来、集団的自衛権の行使の問題とか、消費税の値上げの問題について、それまでの内閣ではしばしば言ってきたように、「この内閣ではこの問題に決着をつけない」とは一言も言っていない。
すでに述べたように、私は反対派の方々の言い分も分かるし、それが悪いとも言っていない。
ただ、あと一年、小泉内閣にフリー・ハンドを持たして温存することに、日本民族のあと何十年かにわたる国益がかかっているかもしれないという大きな利益の前に、従来の行きがかりを捨てて一致協力してほしいのである。
<<靖国も堂々と公式参拝を>>
ついでに申し上げれば、この問題を乗り切ったあと、小泉総理には堂々と靖国神社に公式参拝して頂きたい。
中国は、もう反日デモはできない。今までの反日愛国運動があまりに成功しているために、それが全国的大衆運動になる惧(おそ)れがあり、自縄自縛になっている。
厳戒態勢の小さなデモでは意味が無い。せいぜい、日本、外国も含めて言論による批判を動員するぐらいであろう。日本は敗戦国として、ある程度はこれに耐えねばならないだろうが、そこまでである。今後毎年ということはあり得ない。
むしろ希望的観測としては、かつてのガイドライン関連法にしても、今回の米国のユノカル石油会社買収問題にしても、中国はいくら言ってもダメということになると、あっさり言わなくなる国内統制力を持つ国でもあるということである。
(了)
※HP編集部註:本記事は郵政民営化法案の参議院における否決直前に発表されたものです。
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